デスクの上でいちばん長く触っている道具は何かと考えると、キーボードではなくマウスだった。

僕はLogicoolのMX Anywhere 3Sを、自宅と会社に1台ずつ置いている。買ったのは2025年の6月。それから1年3ヶ月、ほぼ毎日どちらかを触っている。

新しいガジェットの記事は「買った直後の高揚感」で書かれがちだ。この記事はその逆で、1年以上使ったあとに何が残ったかを書く。傷の付き方も含めて、実物の写真を載せる。

1年3ヶ月でこうなった

まず現物から。

1年3ヶ月使ったLogicool MX Anywhere 3Sの上面。細かい傷とテカリが出ている

天面に細かい傷が入り、手のひらが当たる部分にテカリが出ている。ロゴの周りは特に光っていて、毎日握ってきた跡がそのまま残っている。新品の落ち着いたマットな質感が好きな人には、ここは気になるかもしれない。

一方で、動作の面は何も問題が起きていない。クリックが二重に入る、ホイールが空回りする、カーソルが飛ぶ。マウスが寿命を迎えるときの典型的な症状は、今のところどれも出ていない。

見た目は使った分だけ変わる。中身は変わらなかった。1年3ヶ月使った結論としては、それがいちばん正確な表現だと思う。

家と会社に1台ずつ置いている理由

1台を持ち運ぶ選択肢もあった。MX Anywhere 3Sはもともと携帯性を意識した小型モデルで、カバンに入れても邪魔にならないサイズだ。

それでも2台にしたのは、持ち運ぶと「忘れる日」が出るからだった。忘れた日はノートPCのタッチパッドで一日を過ごすことになる。その日の作業効率が落ちるのが分かっているのに、朝の準備でうっかりする。それが嫌だった。

置きっぱなしにすれば、その心配がなくなる。充電ケーブルもそれぞれの場所に挿しっぱなしにできる。

ただし、これは1台あたり1万円台の道具を2つ買うということでもある。誰にでも勧められる選択ではない。「週に何日、どちらの場所で作業するか」で決めるのが現実的だと思う。片方が週1日程度なら、素直に持ち運んだほうがいい。

スクロールの速さは、表計算で体感が変わる

このマウスの中心的な機能はMagSpeedスクロールだ。ホイールを勢いよく回すとロックが外れて、慣性で回り続ける。

これがいちばん活きるのは、行数の多い表計算ファイルを扱うときだった。数千行のシートで、目的の行まで一気に飛べる。ホイールをカリカリ刻む必要がない。

サイドボタンを押しながらホイールを回すと横スクロールになるのも、列の多い表では日常的に使っている。

逆に言えば、長い文書や表を扱わない人には、この機能の価値は小さい。ブラウザとメールが中心の使い方なら、もっと安いマウスで足りる場面が多いと思う。

手が小さい人向け、という話は本当だった

僕は手が小さいほうで、指も長くない。大きめのマウスだと、サイドボタンに親指が届かなかったり、握り込むのに力が要ったりする。

数字で並べると違いがはっきりする。

MX Anywhere 3S MX Master 3S
奥行き 100.5mm 124.9mm
65mm 84.3mm
高さ 34.4mm 51mm
重さ 99g 141g

奥行きで24mm、高さで17mm違う。重さは42g差で、実際に持ち比べるとはっきり分かる差だ。

買う前にできる確認方法を書いておく。手のひらを机に置いて、手首のしわから中指の先までを定規で測ってみてほしい。ここが17cm前後かそれ以下なら、MX Masterの51mmという高さは「握るというより覆いかぶさる」感覚になりやすい。18cm以上あるなら、Masterのほうが手のカーブに沿う。

店頭で触れないときでも、この一手間で判断の精度が上がる。

充電の頻度は、思っていたより気にならない

公称ではフル充電で最長70日とされている。実際に日数を数えたことはないけれど、「そろそろ充電しないと」と意識した記憶がほとんどないというのが実感に近い。

さらに、1分の充電で3時間使えるという急速充電にも対応している。仮に切れても、コーヒーを淹れている間に復帰できる計算になる。

USB-C充電なので、スマホやノートPCと同じケーブルが使える。充電しながらでも操作できるので、切れて作業が止まった場面は今のところない。

こんな人には向かないかもしれない

正確を期すために、勧めにくいケースも書いておく。

  • ゲームをする人:応答速度を重視するなら、専用のゲーミングマウスのほうがいい
  • 長い表や文書を扱わない人:高速スクロールの価値が薄く、価格に見合いにくい
  • 手が大きい人:MX Master 3Sなど、ひと回り大きいモデルのほうが合う可能性が高い
  • 本体の見た目を保ちたい人:上に書いたとおり、1年で傷とテカリは出る

1年3ヶ月使って、今どう思っているか

買った直後に「快適だ」と言うのは簡単だ。本当に価値があったかどうかは、しばらく経ってから分かる。

1年3ヶ月経った今も、家と会社で毎日使っている。壊れていないから使っている、というより、別のマウスに替える理由が見つからないから使い続けているという感覚に近い。

傷は増えた。動作は変わらない。道具としては、それでいいのだと思う。